マクロビオティックとストレス・心と身体のバランス
健康を維持するために必要な別な要素にストレスの緩和があります。
ストレスには精神的な抑圧によるものと、肉体的な負荷によるものがあり、さらに、肉体的なものには、主に消化器や循環器などにかかる負荷による気づきにくいストレスと、肩こりや頭痛、疲れ、気だるさなど、意識の上で感じ取れるストレスがあります。
ストレスという言葉は、もともとは、物理学に使われていた言葉ですが、カナダの生理学者でもあるハンス・セリエ博士が1936年にイギリスの雑誌「ネイチャー」誌に「ストレス学説」として発表したもので、例えば、ゴムボールに圧力がかかって、歪んだような状態のことを言います。
このときストレス状態を引き起こす要因を「ストレッサー」といいます。
ストレスというのは、生物が外的あるいは内的な刺激に適応していく過程そのものを表したものであり、生きている限りストレスをなくすことはできません。
つまり、気候や生活の場所などの環境が変わればそれに適応し、心理的なショックを受ければそれに耐えようとして適応して行こうとするもので、そうした環境に適応していくときの反応と過程をストレスという言葉で表しているのです。
そうした環境は、好むと好まざるとに関わらずに常に変化し、新しい出来事に遭遇することになります。
そうしたときに、心のバランスを保とうとする無意識の精神的、肉体的な働き(反応)がストレスなわけで、それは、とりもなおさず「生きる」ということですから、ストレスという言葉は「生きる」ということそのものと考えても差し支えないくらいです。
セリエ博士の「ストレス学説(ジェネラル・アダプテーション・シンドロームともいいます)」では、刺激の種類に関係なく、その刺激に適応していくときの反応と過程は同様のものを示すということを言っていますが、当時の医学会では「ストレス」という言葉とともに、そんなに簡単に受け入れられる学説ではありませんでした。
セリエ博士は、どんな病気でも同じ症状を示すはずだと言ったのですから、それならば、どんな病気でも同じ治療法が成立するということになります。
当時の医学の常識としては、とても考えにくいことでした。
「地球は丸い」ということを初めて聞いたときの驚きに近いものがあったのでしょうか。
それは、人間は、悲しみでも、喜びでも同じ反応プロセスをたどってその刺激に適応して行くというのです。
ところで、家庭で飼っているペットにもストレスはあります。
元々ストレスの発見はネズミの実験から発見したもので、それを人間にも当てはめたのです。
さらに、セリエ博士は植物にもストレスはあると言っています。
ストレスとは刺激に対する反応ということですが、その反応には、当然悪い反応もあれば、良い反応もあります。 つまり、ストレスには「悪いストレス」だけでなく、「良いストレス」もあるのです。
よいストレスとは、例えば、目標、夢、競争、よい人間関係など、自分を奮い立たせてくれたり、勇気付けてくれたり、元気にしてくれたりする刺激とその状態です。
こうした「良いストレス」が少ないと、人生は豊かにはなりません。
逆に悪いストレスとは、例えば、過労、悪い人間関係、不安など、自分の体や心が苦しくなったり、いやな気分になったり、やる気をなくしたり、周りの人に何らかの迷惑を及ぼしてしまったりするような刺激とその状態のことをいいます。
同じストレッサーでも、受け止める人やその人の心の状態、身体の状態によっては、「よいストレス」になる場合も、「悪いストレス」になる場合もあります。
例えば、スポーツの好きな人には、スポーツはよいストレス状態を引き起こしますが、スポーツの嫌いな人にはいやな気持ちを起こさせるということがあります。
あるいは、ある目標や期限をばねにして頑張る人もいますが、同じ目標や期限を、果たさなければならないノルマ、迫り来る締め切りと感じて自分を苦しめる人もいます。
また、心身のバランスが悪く、何らかの病気などに罹っている場合には、同じ人でも感じ方が違ってきます。
ストレスの量と生産性の関係を見てみますと、ストレスレベルが高すぎても、低すぎても生産性は落ちるということが分かっていて、このことから、人生には適度なストレスが必要と考えられています。
大きすぎるストレスに対しては、それをできるだけ柔らかく受け止め、小さすぎるストレスに対しては、自らチャージして発奮するようにコントロールできるようになれたらいいですね。
「ストレスは生活のスパイスである」と考えることもできますし、マクロビオティックでは、こうしてコントロールすることを、陰陽の調和とかバランスを保つとか言っています。
人と人が接すると、そこには必ずストレスが生じますが、どんな人とも上手に付き合うことができることは、素敵なことであるばかりでなく、自分を高め、成長させ、視野を広げ、心を広げてくれます。
人がもし、いやなことや受け入れがたいことを言ったり、したりしたら、そのこと自体、新しい考え方や行動の仕方を知る機会を得たことになりますし、それにうまく対処できたら、その分新しい経験をつみ、自信を身につけたことになります。
「悪いストレス」を自分のために生かしてください。
そのことが自分を強くし、精神的にも健康を保つことができます。
『身土不二』
人は環境が変わったり、幼い頃から食べ慣れたもの以外のもの、季節の旬ではないものを口にしたりすると、変化に対応しようと体が反応して緊張が高まり、結果として体内のバランスをくずしてストレスを蓄積し、如いては万病の原因ともなります。
従って、できるだけ身近で生産、あるいは獲れたものを食べるべきで、生活の領域に近ければ近いほど良いとされています。
グルメと称してうまさを追及するあまり、必要以上に脂肪や糖分の量を増やしたり、珍味として地元にはないものなどを重宝したりするのを戒めて、マクロビオティックでは粗食を薦めています。
ただし、近年は交通網や流通経済の発達により、遠方の土地で生産されたものも比較的容易に日常的に手に入れることができますが、またこれとは別に極端な自給率の低下により、国内産だけでは十分な量の食料が確保できなくなっています。
さらに汚染物質などが地表から川を経由して海に流され、海底からは有害な火山性物質が排出されても、自然の浄化力だけでは間に合わなくなってきており、天然、近海の魚介や海草なども、その安全性が危惧されてきています。
そうなるとミネラル類が豊富に含まれた海藻類であっても、それのみにミネラルなどの栄養素の補給を頼ることも難しくなり、サプリメントなどが比較的安全な栄養補給食品とも言えるようになってきています。
マクロビオティックという言葉には、生命をマクロ的に考える学術という意味も込められています。
ということは、西洋医学、漢方医学はもちろんのこと、栄養学、薬学のほか、生物学、考古学、人類学、環境学など、関連するあらゆる学問をも包括的、総合的に見ていかなければなりません。
研究そのものはそれぞれの学問で行われますので、その結果としての情報を常に評価し、参考にしていく作業は必要になります。
『一物全体』
食物では、特に植物性のものは葉、茎、根などの全体にその植物が持つ栄養素が必要に応じて配分されていることが多いので、そのすべてを一度に食することが、体内で吸収されるときの栄養バランスもよく、消化するための胃酸や酵素なども無理、無駄、ムラがなく効果的に分泌、作用されるので、消化の際の負担(ストレス)が少なく身体に良いとされています。
調理法としては、野菜などを茹でたりするのはせっかくの栄養分を茹で湯に溶かして捨ててしまうことになるので避けます。
皮などもできるだけ剥かずに調理し、種々の野菜を一緒にじっくり炒めたり、煮詰めたりすることによって、砂糖などを使用しなくても野菜そのものの旨みや甘みを充分に引き出すことができます。
穀物や豆類などの種子類は、将来そこから芽が出て茎と根が伸び葉が付き実を実らせることから、その植物が持つ栄養素のほとんどをバランスよく保有し、また生命を力強く成長させる根源的なパワーを持っています。
マクロビオティックは、体内でのストレスを極力発生させずに多くの必要な栄養を摂り入れるために、植物の全体を同時に食することを原則とし、主食として栄養バランスもよく吸収刺激の少ない玄米食を奨めています。
現代は「ストレス社会」と言われます。
適度のストレスは、心身が鍛えられボケ防止に役立つなどの良い面もあるのですが、過度なストレスや長期のストレスは、様々の身体の異常を引き起こしたり、生活習慣病を招いたりしてしまいます。
ストレスをまったくなくすことは無理としても「うまくつき合うにはどうしたらよいか?」、また、「ストレスに強くなる食事は?」、などを考えてみる事が必要なのではないでしょうか?
ストレスというと、まず人間関係の悩みや仕事上のトラブルなどによっておこる精神的(内的)なものを言うように思えますが、寒さや暑さにさらされたときや激しいスポーツ後のような外的なものも含まれます。
また、最近よく耳にする「活性酸素」によって、体内で細胞に及ぼすトラブルも広い意味でストレスと言われます。
医学的には、脳下垂体から生成される副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)の分泌を促すような内外の刺激を「ストレッサー」と呼びますが、これによって引き起こされる一連の生体防御反応を「ストレス」と呼びます。
つまり、体の内外の刺激に対して体が防御しようとする反応のことを指しています。
ストレスによって体内ではなにが?
精神的な緊張が続くと、よく「胃が痛くなる」と言いますが、ストレスが起こると体はそれに対する様々な反応を示します。
ストレスが原因で胃や十二指腸の潰瘍・高血圧・頭痛・肩こり・めまいなどといった症状として現れたり、体の免疫力が低下して感染抵抗力が衰えるために風邪をひきやすくなったりします。
命に関わるような脳梗塞や脳内出血・心筋梗塞などもストレスが原因で、活性酸素によって血管を痛めたり血液の流れを悪くしたりするために起こるとも言われますし、最近では、糖尿病・肥満もストレスが原因となって起こることが多いと言われています。
ストレスによって何故このようなことが起こるのでしょうか?
実際には、体はストレスという敵に対して「そう簡単にはやられないぞ」というしくみが働きます。
ストレスによって体のおこす応答反応には自律神経系のものと、下垂体・副腎皮質系という内分泌系(ホルモン)の働きによって起こるものがあると言われているのですが、ストレスがかかると交感神経の中に貯えられているカテコールアミンというストレスと深く関係するホルモン物質が放たれます。
たとえば血管はストレスを受けると、カテコールアミンによって収縮します。
すると今度は副交感神経にあるアセチルコリンが放出し血管を開くように働きます。
これが繰り返されると細い血管が傷つけられたり、血液の流れが悪くなったり、活性酸素によって細胞が傷つけられたりということがおこり、胃潰瘍や心筋梗塞などの原因になると言われています。
ストレスに勝つためには?
少しでもストレスをなくすためには次のようなことに積極的に取り組みましょう。
十分な睡眠と休養 ストレスを解消するためには十分な睡眠は勿論、リラックスできる時間を持つことが大切です。
入浴(半身浴や温泉浴などが効果的)・音楽鑑賞・アロマテラピーなど。
リラックスできる運動(有酸素運動)
体を動かすこと自体ストレスの解消になりますが、激しい運動のし過ぎはかえってストレスを生み 活性酸素を体内に増やしてしまうので注意が必要です。
全身を使って毎日できる運動で、軽く汗をかく程度の有酸素運動が効果的です。
普段から運動をしている人は血液の流れもよくなり、また食事で摂った抗酸化物の働きを助け全身に送り込むという利点もあると言われています。
ストレスに強くなる栄養 休養や適度な運動に加えて、活性酸素から体を守りストレスに強くなる食生活も見直しましょう。
<食事でストレスを防ぐ>
ストレスと栄養は無関係のように思われますが、以外と関係が深いのです。
ストレスによって特定の栄養素が消耗したり特定の栄養素の助けが必要となったりします。
過度のストレスが長い間続くと栄養障害の心配もあります。
例えば、脳の唯一のエネルギー源であるブドウ糖はストレスによって血液からの供給量が足りないと脳の活動が低下します。
ストレスにさらされると、その状態を改善して体の中の働きを保とうとして、カテコールアミン(副腎髄質ホルモン)や副腎皮質ホルモンが活発に分泌されますが、それらを体内で合成するためにはビタミンCが必要なので、ストレスが多くなるとそれだけたくさんのビタミンCが必要になります。
カテコールアミンや副腎皮質ホルモンが分泌されると、「蛋白質」の分解が進み尿中の窒素の排泄量が増えます。
ストレスによって蛋白質の消耗が増すので、十分蛋白質を摂取することが必要となります。
またカルシウムには脳細胞の興奮を抑えて気持ちを落ち着かせる作用があるので、十分なカルシウムを摂ることで精神の興奮を抑えストレスに強くなることができます。
ストレスによって、抗酸化機能が低下して癌や動脈硬化などの生活習慣病の誘発や促進に繋がりますが、それを防ぐためには抗酸化ビタミンのビタミンCやビタミンE・β−カロチンが不足しないように気を付けることはとても重要です。
ビタミンB群(B1・B2・B6・B12・パントテン酸・ナイアシンなど)は抗ストレス作用があり、また蛋白質や細胞の新生に関わったり糖質の代謝を助けたりします。
ある種のストレスにさらされると、カルシウムとマグネシウムの尿中排泄量が増えます。
腎臓の働きが変わったり、細胞の活動が低下したりすることが影響していると言われています。
普段からストレスを感じている人は、積極的にビタミンC・β−カロチン・ビタミンE・良質蛋白質・多種のミネラル・ビタミンを十分に摂るようにしたいものです。
このためには、緑黄色野菜をはじめ各種の野菜や果物・良質蛋白質を含む肉・魚・卵・牛乳・乳製品・芋・豆・海藻・根菜類などを、朝昼夕の三食でバランスを考えて摂るように心掛けましょう。
こんな料理がお勧めです!
ストレスから体を守るためには・・・・・
グリンピース(ビタミンB1が豊富)とジャコと春菊のかき揚げ
玉葱(硫化アリル)と鶏ササミのサラダ(アボガドドレッシングかけ)
ツルムラサキ(カルシウムたっぷり)と蟹のゴマ和え
他にもオカヒジキ・小松菜・セリ・菜の花・ニガウリ・モロヘイヤ・根ミツバを使った料理など
食べるときに緊張していたり急いで食べたりでは、せっかくのストレスをなくすための食事も十分な働きをしてくれません。
やはり、楽しい環境でゆっくり食べることも健康状態を良好に保つためには必要といえます。
またヒトが健康を維持するためには、心とからだのバランスを保つことが非常に重要なことです。
ヒトのからだのしくみには、自律神経やホルモンなどというような、心の状態に大きく影響を受けるものがあるからです。
体調が優れなくなると、からだはいち早く「愁訴」という状態で精神に信号を送ります。
「辛い」とか、「苦しい」とか、「悲しい」とかという気持ちは、単に感情の問題にとどまらず、身体の健康にも非常に悪い影響を与えます。
逆に「うれしい」とか、「楽しい」とか、「落ち着く」といったような気持ちは、精神を安定させ明るくし、病気を治すことすらあります。
そしてそれは、食べ物の消化や栄養の吸収にまで影響を与えます。
これらは特に最近になって、その影響力が想像以上に大きいことに気がついたことです。
マクロビオティックでは、そういったことも含めて昔から積極的に研究してきました。
音楽が体調に与える影響も大きいことがわかっています。
それらは、単に人体だけでなく、他の動物や植物にさえ影響があるのでは、ということで研究が続けられています。
地上にあるハーブや花が人の心を和ませることも昔から知られていることで、地球環境の全体で生き物は生かされているとも言えます。
つまり、環境が不健康になったとき、ヒトの健康も脅かされ、病気になる可能性も少なからずあるということです。
生きるための力は食べ物だけから得られるものではないということです。
人類は、今まであまりにも自然環境を軽視してきたのではないでしょうか。
そして植物や動物などを慈しむ心、夕日や雲の流れ、川の流れなどの自然の美しさを愛でる心は、その気持ちと行動自体が自らを癒し、自分をも健康にしていきます。
それは実験的にも証明されていることであり、末期がん患者や老人ホームの痴呆症対策にもペットを使った心療医療が行われており、いくつかの効果も報告されています。
最近では、「癒し」というキーワードが注目され、様々なことが一部実験的に行われています。
「病は気から」というのは、単に言葉の綾だけではないと思います。
現代の医学ではどうにも手の施しようがなくなった患者に対してのみ、気休めのような心療治療を施していますが、通常の医療と並行して行うべきと思います。
マクロビオティックは医学ではありませんので、治療行為は許されていませんが、一部の医師の間では、マクロビオティックを治病の効果を高めるために利用しようとする動きもあります。
心と身体の両面から病気を治そうというのは、すべてのバランスを重視するマクロビオティックの基本的な考え方です。